塾長ブログ No.93 2024/9/3 ソーライス
塾長ブログ幼い頃、たまのぜいたくに阪急百貨店の大食堂へ連れて行ってもらいました。
その頃ハンバーグやエビフライ、オムライスなどの洋食も珍しく、プリンアラモードなんかもあったような気がします。
今日のお話は、そんな阪急百貨店大食堂のお話。
昭和4年に開業した阪急百貨店の大食堂は、カレーライスが人気のメニューで、これにウスターソースをかけて福神漬をそえて食べていました。
そのうち、世界恐慌が始まり、サラリーマンは昼食代にも困るようになりました。
そこで目をつけたのが、レストランや食堂の一番安いメニュー、「ライス」。
そう「ご飯」です。お皿に載った白いご飯にソースをジャバジャバかけてお腹を満たしました。
これがソースライス、略して「ソーライス」です。
困ったのがレストランや食堂。「ライスだけのお客様お断り」の案内を貼り、若い貧乏な客を締め出した店もありました。
そんな中、当時の阪急百貨店の社長小林一三(こばやしいちぞう)は、新聞広告で「当店はライスだけのお客さまを、喜んで歓迎いたします。」と案内し、昼食時には自ら食堂に立ち、ソーライスを食べるサラリーマン達にニコニコし、頭を下げながら客席を回りました。ソーライスのお客さんには、福神漬をたくさん付けるようにと細かい指示まで店員に出していたと言われています。
小林一三は阪急グルーブや東宝・宝塚歌劇団を作った実業家です。
当然、忙しいだけでもうかりませんから、社員の中には小林一三のやり方に不満を持つものもたくさん出てきました。
そんな時、「確かに彼らは今は貧乏だ。しかし、やがて結婚して子どもができる。そのときここで楽しく食事をしたことを思い出し、家族を連れてまた来てくれるだろう。」とさとしたと言われています。
実際、その後景気が持ち直し、その時にソーライスを食べていた貧しいサラリーマン達が家族連れでやってきました。また、若い頃にソーライスでお腹を満たした彼らが関西の財界をリードするようになってからも、ソーライスを注文して、たくさんのチップをお皿の下においていったと言われています。
お客様も育てていく。
たいがいのモノやサービスが「クチコミ」の星の数で評価されている今、一番難しく大切なことになっているんでしょうね。