塾長ブログ No.97 2024/10/1 辞書を読む
塾長ブログ高校3年生の授業では、大学入試問題を解いていってます。
国公立の2次試験では、「下線部を日本語に訳しなさい。」という問題のオンパレード。
大阪大学や京都大学では、5行から10行程度の英文を全て訳させる問題も出てきます。
ここで大切なのは、「最適な語の意味」を選ぶということ。
1語の単語の中にも、様々な意味があります。
文全体を読んで、日本語に訳してみて「一番ぴったりくる」訳にしなければいけません。
1語1語の意味だけを単に置き換えて訳したら変てこな日本語になってしまいます。
これを英語では、”word to word”の翻訳(ほんやく)と言います。
英語を習いたての小学生・中学生がよくすることです。辞書の一番初めに乗っている「日本語訳」を選んでしまいがちです。
最近は、電子辞書が大流行りです。
英和・和英辞典 国語辞典 その他の専門用語集…。
実に便利です。
ただし、紙の辞書もいいもんです。
何よりも、楽しく読むことが出来ます。
例文や語法。
語源まで説明してくれています。
学生時代は、授業中暇なときに(何でやねん)、よく辞書を読んでいました。
このおかげで、言葉の感性が磨かれた気がします。
言葉の使い方で全く印象が変わってしまう例を一つあげてみましょう。
フランスの詩人ヴェルレーヌの『秋の日』という名作です。日本でもたくさんの詩人が訳しています。
先ずは、金子光晴(かねこみつはる)さんの訳
秋の唄
秋のヴィオロンが
いつまでも
すすりあげてる
身のおきどころのない
さびしい僕には、
ひしひしこたえるよ。
鐘が鳴っている
息も止まる程はっとして、
顔 蒼(あお)ざめて、
僕は、おもいだす
むかしの日のこと。
すると止途(とめど)もない涙だ。
つらい風が
僕をさらって、
落葉を追っかけるように、
あっちへ、
こっちへ、
翻弄(ほんろう)するがままなのだ。
他にもたくさんの詩人が訳していますが、僕が一番好きなのは次の上田敏(うえだびん)の訳。
『落葉』
秋の日の
ヰ゛オロン(ヴィオロン)の
ためいきの
ひたぶるに
身にしみて
うら悲し。
鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。
げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。
ね、同じ詩でも訳した人の言葉の選び方で全く違う印象になるでしょう。