塾長ブログ No.102 2024/11/5 読書の秋
塾長ブログひとり、燈(ともしび)のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰(なぐさ)むわざなる。 文は、文選(もんぜん)のあはれなる巻々、白(はく)氏(し)文集(もんじゅう)、老子(ろうし)のことば、南華(なんか)の篇。この国の博士どもの書ける物も、いにしへのは、あはれなること多かり。
上の文章は、鎌倉時代の名随筆家吉田兼好が書いたもの。
意味は次の通り。
秋の夜、一人灯火の下で本のページを開く。
見も知らぬ本の中の人物や、その作者を友達にする。このうえなく癒される。
本は、『文選』の感動の巻々や『白氏文集』。『老子』の言葉に『荘子』の著作。
日本の学者達が書いた本でも、古典には感動するものが多くある。
先日、久しぶりに電車に乗りました。
通勤・通学時間帯でしたので、勤め人や学生が大半でしたが、ま、見事にみなさん、下向いて画面を見ています。
スマホ・iPad、ノートパソコンを膝の上においてカタカタしているお兄さんも。
以前は、新聞を読んでいるお父さんは見かけましたが、ほとんどいらっしゃいません。
確かに、デジタル版の方が安いし、記事の検索も簡単ですからね。
英語などの洋書を電子書籍で読むと、更にパワーアップしていてわからない単語が出てきたら、その語を長押しすれば意味が出てくるなんて機能もあります。
さ、これだけ便利な機能がついていたら電子書籍がもっと普及してもいいと思いますが、紙の本がすたれないのはどうしてでしょう。
確かに、僕は調べ物の資料にしたり、「単なる情報」として活字を利用するならばいいっていう感じでしたね。
11月1日は「古典の日」。
平安時代の1008年(寛(かん)弘(こう)5年)のこの日に、源氏物語について書かれた記述が『紫式部日記』に初めて出てきます。
そして、10月27日から11月9日までの期間が「読書週間」。
僕も、ずいぶんと断捨離で本を処分しました。
国文学に関する本は立命館大学の研究室に寄贈したり、まとめて古書店に売りました。
それでも、本棚の中に残しているお気に入りの作者や、きれいな詩集。
学生時代、お昼ご飯をぬいて読んだ岩波文庫の数々は、1ページ1ページめくるごとにその時々の思い出がよみがえってきます。
これこそが、読書の楽しみじゃないかと思います。
秋の夜長、読書を楽しんでみてくださいね。