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塾長ブログ No.167 2026/05/19 高校国語の再編成に思うこと――いま改めて伝えたい「小説を読む意味」

塾長ブログ 塾長ブログ No.167 2026/05/19 高校国語の再編成に思うこと――いま改めて伝えたい「小説を読む意味」

  最近ニュースで、文部科学省が2032年度からの新しい学習指導要領で、高校国語の科目をまた再編する方針を固めたという記事を目にしました。
前回の改訂で新しくできた「論理国語」や「文学国語」といった区分を、事実上なくしてしまう方向なのだそうです。
要するに失敗で、あと6年は我慢してくださいね。ってことです。

これを聞いて、僕の正直な感想は「また小手先の変更が始まっちゃったな……」というものでした。

国語の科目の名前や仕組みがコロコロ変わるたびに、一番振り回されてかわいそうなのは、現場の生徒さんたちです。
「何のためにこれを勉強しているんだろう?」と混乱してしまいますよね。
そして、学校で日々教壇に立っている先生方も、次々と変わる制度の対応にきっと戸惑われているんじゃないかと思います。

そもそも、国語ってそんなに難しく分ける必要はないと思うんです。
「現代文(評論・小説)」「古文」「漢文」――。このシンプルな分け方で十分です。

「論理的に考える力」や「実生活で使える国語」と言って、授業でビジネスの議事録や取扱説明書なんかを読ませる試みもあるようですが、それがどれだけ生徒さんたちの将来に役に立つのか、僕は少し疑問に思っています。そういった実用的なスキルは、社会に出て必要に迫られれば自然と身につくものです。学校という貴重な学びの時間に、わざわざ時間を割いてやることではない気がしてしまうのです。

 

授業から「小説」が消えた? 現場で起きていた驚きの事実

こうした「実用性重視」の流れのなかで、いま教育の現場ではちょっと寂しいことが起きています。

実は最近、塾の生徒さんたちと話していて、とても驚いたことがありました。なんと、「学校の国語の授業で、小説をほとんと読んでいない」という生徒さんが何人もいたんです。

詳しく聞いてみると、選択した科目の関係で、高校に入ってから教科書でほとんと小説を扱っていないのだとか。これには本当にびっくりしましたし、今の国語教育はどこか大切なところが歪んでしまっているのではないかと、強く危機感を持ちました。

ただでさえ忙しい現代の高校生です。学校の授業でも物語に触れるきっかけがなくなってしまったら、自主的に小説を開く機会はますます減ってしまいますよね。

 

いまこそ考えてみたい「小説を読む意味」

タイパ(タイムパフォーマンス)や効率ばかりが求められる今の時代だからこそ、僕はあえて「小説を読むことの大切さ」を伝えたいと思います。

僕が考える、小説を読む意味は大きく3つあります。

1. 「人情の機微」がわかるようになる

小説を読むというのは、自分ではない誰かの人生をのぞき見して、一緒に体験するようなものです。 登場人物たちの喜びや悲しみ、心の中の葛藤に触れることで、僕たちは「人情の機微」(人間の細やかな心の動きや気持ち)を自然と学んでいきます。

これは、目の前にいる人の気持ちを想像する「思いやり」の根っこになるものです。たとえ現代を舞台にしたお話であっても、何百年も前のお話であっても、人間が心の中で悩んだり、誰かを愛おしく思ったりする本質は変わりません。マニュアルや取扱説明書からは絶対に学べない、白黒つけられない人間関係を優しく生き抜く知恵が、小説には詰まっています。

2. 自分の世界を広げ、心を見つめ直す

人間は、自分の人生しか生きることができません。でも、小説を開けば、別の時代を旅したり、自分とは全く違う仕事や境遇の人の心に飛び込んだりできます。 物語を通じて「もし自分だったらどうするだろう?」と考える時間は、自分の心を深く見つめ直す、とても贅沢で大切な時間になります。

3. 思いがけない「名作」との出会い

かつて僕自身も、模試の試験問題として出逢い、胸を打たれてそのまま本屋さんに走ったお話がいくつもあります。

  • 人間の温かさや切なさをじんわり描いた、山本周五郎や平岩弓枝の名作。
  • どこか懐かしくて愛おしい人々が登場する、浅田次郎さんの『霞町物語』。
  • 日々の「食」を通して心がほぐれていく、角田光代さんの『彼女のこんだて帖』。

これらはすべて、試験や教科書という「偶然のきっかけ」があったからこそ巡り合えた、僕の生涯の宝物です。今のシステムは、生徒さんたちからこうした素敵な出逢いのチャンスまで奪ってしまっている気がしてなりません。

 

変わらない本質を、塾ではじっくりと

教育の流行りや、お役所が決めるカリキュラムがこれからどう変わっていこうとも、言葉を通して「人間」を学ぶという国語の本質は、これから先もずっと変わりません。

論理的に筋道を立てて考える力(評論)も、誰かの気持ちに寄り添う力(小説)も、昔の人の知恵を受け継ぐ力(古文・漢文)も、どれか一つが欠けてもいけない、すべてが繋がって一人の豊かな心が育っていくのだと、僕は信じています。

僕の授業では、目先のルール変更に右往左往することなく、生徒さんたちが一生モノの「本物の国語力」と「豊かな心」を育めるよう、これからも本質を大切にした指導を続けていきます。

たまにはスマホの画面を少しだけ消して、一冊の小説をめくってみませんか? そこには、教科書や取扱説明書には絶対に書かれていない、あたたかくて愛おしい人間の世界が広がっていますよ。

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