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塾長ブログ No.176 2026/7/21 あえて「不親切」にする理由――便利すぎる時代に、本当の「考える力」を育てる

塾長ブログ 塾長ブログ No.176 2026/7/21  あえて「不親切」にする理由――便利すぎる時代に、本当の「考える力」を育てる

ここ数年、子どもたちの「考える力」が少し変化してきたと感じることがあります。

背景には、紙の活字を読む機会が減ったことや、辞書を引かなくなったことがあります。
最近では英文をスマホのカメラで撮り、「全文訳して」とAI
に指示すれば、一瞬で日本語訳が出てくる時代です。
AIやデジタル教材は非常に便利で、学習の「スタートライン」の格差を無くしてくれました。

しかし、「便利さ」と「本当の学力が身につくこと」は別です。

今どきの参考書はフルカラーで解説も完璧、重要箇所には最初からラインが引かれています。
わからない問題も検索すればすぐに答えに辿り着きます。
しかし、これは「植物に水をやりすぎて根腐れを起こしている」状態に近いのかもしれません。
自分で辞書をめくり、悩んで工夫し、試行錯誤する――
そんな「手間」のなかでこそ、思考力の根っこは深く育つからです。

昔語りをするつもりはありませんが、僕たちが受験生だった頃、大学入試の問題レベルや倍率は今よりもはるかに高かったように思います。
それでも、教科書と『チャート式』や『基礎からの英語』といった数冊の参考書、そして少しの問題集を使い倒すことで、十分に実力をつけることができました。

英語で「辞書を引く」を consult one's dictionary と表現します。直訳すれば「辞書と相談する」です。
一方的に答えを与えられるのではなく、いくつもある訳語の中から「どの意味がこの文脈にぴったりか」を辞書と相談しながら、自分で最適解を探していく。その試行錯誤のプロセスこそが、思考力を鍛えていたのです。

僕が愛用していた旺文社の『赤尾の豆単』は、今の単語帳のような頻出順ではなくアルファベット順でした。
最初に出てくる単語が abandon(見捨てる、断念する)
「受験勉強の第一歩なのに、なんて縁起の悪い単語なんだ」と苦笑いした記憶があります。
しかし、そうやって辞書を手繰り、手と頭を動かして苦労した記憶は、今も鮮明に残っています。

今の学習環境は、最初から重要箇所に線が引かれ、わからないことも検索一つで答えが出ます。
しかし、考える前に答えが手に入る「過保護」な環境は、かえって子どもの考える根っこを奪ってしまうのではないでしょうか。

だからこそ、学窓社ゼミの授業は「懇切丁寧、隅から隅まで教え切る」ことはしません。
あえて少し「不親切」に、考える余地を残します。

たとえば中学1年生の最初の授業では「ここは大事だからプリントに書いてね」と指示しますが、学年が上がるにつれてその指示を減らしていきます。
受け身のままでは本当の賢さは身につかず、自分の進路すら自分で選べなくなってしまうからです。
あえて手間を残すことで、自ら能動的に学ぶ姿勢へと変えていきます。

先日、高校1年生のK君が「紙の辞書を使いたいので、おすすめの辞書はありますか」と聞きに来てくれました。
AI時代に、あえて自分の手で「辞書と相談する」道を選ぼうとする姿が、とても頼もしく感じられました。

学窓社ゼミの授業は、英語も国語も数学も個別指導も、「懇切丁寧に、隅から隅まで全部教える」授業ではありません。
ある意味では、不親切な授業なのかもしれません。

でも、その「少しの不親切」が、生徒さん自身が考え、調べ、工夫する時間を生み出します。
そして、その積み重ねが、受験勉強だけではなく、自分で進路を考え、自分で人生を選び取る力へとつながっていくと僕は信じています。

AIはこれからもますます進化していくでしょう。
便利な道具を使うことを否定するつもりはありません。
むしろ、上手に活用すれば大きな力になります。

だからこそ、その前に身につけてほしいものがあります。

「自分の頭で考える力」。

それこそが、どんな時代になっても決して色あせることのない、本当の学力なのだと思っています。

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