塾長ブログ 173号 2025/6/30 夏を制する人は、最初の25分を制する ― ポモドーロテクニックのすすめ
塾長ブログ「先生、やる気が出ないんです。」
この仕事をしていると、本当によく聞かれる言葉です。
高校生からも、高校受験を控えた中学3年生からも、時には保護者の方からも相談されます。
「どうすればモチベーションは上がりますか。」
その気持ちはよくわかります。
誰だって、やる気に満ちた状態で机に向かいたいものです。
でも、僕はその質問を受けるたびに、いつも同じことを思います。
そもそも、やる気やモチベーションというものは、何もしていないところには存在しません。
「やる気が出たら始めよう。」
そう考えている限り、なかなか勉強は始まりません。
少しだけスマホを見よう。
ニュースを読んでから始めよう。
動画を一本だけ見てから机に向かおう。
そんな「少しだけ」の積み重ねが、1時間、2時間をあっという間に奪っていきます。
特に土曜日、日曜日、またすぐにやってくる夏休みのような長期休暇は要注意です。
学校がある日は「もっと時間が欲しい」と思っていたはずなのに、いざ時間がたっぷりあると、「今日はまだ時間がある」と油断してしまう。
そして一日の終わりに、「今日は何をしていたんだろう」と後悔する。
そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
でも、本当に原因は「やる気が出なかったこと」なのでしょうか。
僕は逆だと思っています。
勉強を始めなかったから、やる気が生まれなかったのです。
受験で成功した生徒さんを何百人と見てきましたが、最初から毎日やる気満々だった人には、実はほとんど出会ったことがありません。
合格した生徒さんたちに共通していたのは、気分に左右されず、とにかく「始める」ことができたということです。
自転車を思い浮かべてください。
最初のひとこぎがなければ、自転車は前へ進みません。
でも、一度動き出せば、不思議なくらい軽く走り始めます。
勉強もまったく同じです。
参考書を開く。
ノートを開く。
問題を一問だけ解いてみる。
社会人なら、パソコンを開き、ファイルを開いてキーボードを打ち始める。
この最初の行動が、眠っていた脳を動かし、集中力を引き出してくれるのです。
だから僕は、「やる気が出たら勉強する」のではなく、「勉強を始めるからやる気が出る」のだと考えています。
そのためにおすすめしているのが、「ポモドーロテクニック」です。
まず、その日にやることをすべて書き出します。
そして朝一番に、A・B・C・Dと優先順位をつけます。
Aは今日必ず終わらせること。
あとはAから順番に取り組むだけです。
タイマーを25分にセットし、その25分間だけは、目の前の勉強だけに集中します。
スマートフォンは机の上に置かない。
時計を何度も見る必要がないよう、終了を知らせてくれるタイマーを使う。
ポモドーロテクニックは「25分勉強して5分休憩する方法」とだけ紹介されることが多いのですが、それだけでは本当の効果は発揮できません。
高校受験生や大学受験生向けに、僕は次のような手順で指導しています。
ポモドーロテクニックの実践方法
① 朝一番に「今日やること」をすべて書き出す
頭の中だけで考えるのではなく、必ず紙に書き出します。
例えば、
- 英単語100語
- 英文法 2ページ
- 数学 問題集20題
- 古文単語30語
- 理科 ワーク10ページ
というように、できるだけ具体的にします。
「数学をやる」ではなく、 「数学ワークP42~45」のように終わりが見える書き方がポイントです。
② 優先順位をつける
おすすめはA~Dの4段階です。
A:今日必ず終わらせること
- 学校の宿題
- 毎日の英単語
- 塾の復習
B:できれば今日進めたいこと
- 苦手単元
- 長文演習
C:時間があればやること
- 暗記の確認
- プラスアルファの演習
D:今日はやらなくてもよいこと
- 来週でも間に合う課題
- 余裕があればやる内容
そして、Aが終わるまではBに手を出さないことが重要です。
③ 25分だけ集中する
タイマーを25分にセットします。
その25分間は、
- スマホは机の上に置かない
- SNSを見ない
- LINEを見ない
- 音楽もできれば流さない
目の前の一つだけに集中します。
「25分だけ」と決めることで、心理的な負担が小さくなります。
④ 5分休憩
タイマーが鳴ったら必ず休みます。
おすすめは
- 水を飲む
- 軽くストレッチ
- 窓の外を見る
- 少し歩く
です。
スマホを見始めると5分では終わらないので、おすすめしません。
⑤ 4セット終わったら少し長めに休憩
25分+5分を4回繰り返したら、
20~30分程度休憩します。
これで約2時間になります。
受験生におすすめの一日
例えば夏休みなら
8:00~8:25 英単語
8:30~8:55 英文法
9:00~9:25 数学
9:30~9:55 数学直し
10:00~10:30 30分休憩
というように区切ります。
タイマーはスマホではなく専用タイマーがおすすめ
スマホは便利ですが、
「タイマーだけ」のつもりが
通知を見る
↓
LINEを見る
↓
YouTubeを見る
↓
30分経過
ということが本当によくあります。
できれば
- キッチンタイマー
- 学習タイマー
- トマト型タイマー
などを使う方が集中できます。
ちなみに、「ポモドーロ」とはイタリア語でトマトという意味です。
考案者がトマト型のキッチンタイマーを使っていたことから、この名前が付けられました。
実は、ポモドーロテクニックの本質は25分という時間ではありません。
「始める仕組み」を作ることです。
「今日は3時間勉強しよう」と考えると、人は気が重くなります。
でも、「まず25分だけやろう」と考えると、不思議なくらい体が動きます。
そして、一度始めると脳は集中モードに入り、「もう1セットやろう」という気持ちが自然と生まれてきます。
つまり、やる気があるから勉強するのではなく、勉強を始めるからやる気が生まれるのです。
それだけで集中力は驚くほど変わります。
受験勉強は、特別な才能で決まるものではありません。
毎日、最初のひとこぎを続けられる人が、最後には大きく前へ進みます。
この夏、「やる気が出ない」と感じたら、やる気がやって来るのを待つ必要はありません。
参考書を開く。
ノートを開く。
まず一問だけ解いてみる。
その小さな一歩が、今日という一日を変えます。
そして、その一日の積み重ねが、この夏を変え、やがて志望校への道を切り拓いてくれると、僕は信じています。